歴史に埋もれた声なき声 夏野剛/私の名作ブックレビュー【書評】
ほんの半世紀ほど前、日本政府は国策として移民を募り、多くの日本人が地球の反対側、新天地アマゾンに希望を託して旅立っていった。雨期ともなれば広大な低湿地帯となるアマゾンは、とても農業用地などに適しているはずもなく、多くの移民は貧困と病によって命を落としていった。これは紛れもない史実である。
私は以前、サンパウロにあるブラジル日本移民史料館へ行った。ここにはいかに多くの日本人が、血の滲むような努力と苦労を重ねて今の日系社会を築いてきたかが克明に記されていた。...