僕の構造師匠 マキタスポーツ/私の名作ブックレビュー【書評】
18歳になるまでほとんど本を読まない子どもでした。大学入学を機に上京しましたが、当時のバブルに浮かれた環境に馴染めず、一時期引きこもりになりました。何もすることもなく、仕方なく本でも読んでみるかと、近所の本屋へ行きました。普段本など読まない人間が、いきなり長編大作なんて無理です。短編集なら集中力を切らさずに読めるかなと思い、手に取ったのが本書『ボッコちゃん』でした。
僕は子どものころから学校の先生のマネをしたり、周りを笑わせることが好きでした。将来は芸人になりたいと考えていましたが、その場限りの一発ギャグは言えても、ネタや台本など書けるわけもなく、どうやっていいかもわからず、そのまま大人になるまでボンヤリ過ごしていたところ、星新一さんの本を読んで、自分の中にあった笑いの要素を、構造的に考えることができるようになりました。
なぜこの歌は売れるのか、メロディーや歌詞の構造を分析し、ヒット曲の法則を導きだし、そこからネタをつくる……。そうやって出来た曲が「十年目のプロポーズ」。これは僕の構造思考の賜物です。
かれこれ40年以上も前に刊行された本ですが、今の時代に通用する面白さがあります。僕はこの本から、プロットの立て方、筋ふり、オチの作り方を学んだといっても、過言ではありません。僕の構造思考の師匠、まさに星新一さんは僕の構造師匠なのです。