文士を動かす好不況の波/『カネと文学』

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 えげつないタイトルである。しかし、なんとも魅力的なテーマではないか。
 貧乏をものともせず、反俗を覚悟した近代日本の作家たちが、こと志に反して(?)、俗中の俗たるカネを手にする。
 明治の御代、一葉が啄木が、なんら報われることなく、巷で窮死した。鴎外は陸軍軍医が本職であり、漱石は朝日新聞小説記者として死んだ。
 カネの流入は大正八年に劇的に起こった。「改造」「解放」という新雑誌の参入による原稿料大幅アップ、千部、百部の単位だった単行本が万、十万の部数になる。...

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