サラリーマン冒険譚 安藤美冬/私の名作ブックレビュー【書評】
“女性ひとり客でも安心して食べられるお店”として、ファーストフードでは難しいとされていた無添加のスープを扱う株式会社スマイルズを興した遠山氏。まったくの食の素人にも拘らず、「スープストックトーキョー」を数十店舗展開するまでに成長させたカギは一体何か。3つのポイントを挙げてみた。
1つは「社内起業」だ。副業禁止など制限のある日本では、やりたいことのためにやむなく退職して「起業」を選択するケースも多いが、遠山氏は三菱商事の社員という立場でスマイルズの社長に就任した。会社が持つ信用力や巨大インフラと、個人が持つ機動力や意思決定の早さという両面の良さを生かした「社内起業」が、こうした成功事例によって一層盛り上がることを期待したい。
2つめは、「自分ブランド戦略」だ。遠山氏は「一流企業の会社員」に、個展を開くほどの実績を持つ「アートワーク」を掛け合わせ、企画書やビジネスに生かした。この掛け算は、自分の強みを最大化する「自分ブランド方程式」なのである。
そして最後のポイントは、何といっても「情熱」だろう。未経験でも、成功する保証がなくても、困難をものともせずに邁進するる遠山氏は、私たちに「情熱が恐怖を圧倒する瞬間がある」と教えてくれる。
読後感が最高な、「サラリーマン冒険譚」である。