虚飾と真情の間を生きた激動の人生/『レマルク』
新潮文庫の海外文学にはかつてずいぶんお世話になった。ちょっとした個人全集並みに、欧米の作家の小説が揃っていた。それも今は寥々たるものである。
いまだ在庫が途切れずサバイバルしている一冊に『西部戦線異状なし』がある。その作者レマルクの評伝が本書である。「最も読まれ、最も攻撃され」ながら、革命と戦争と映画と性愛の20世紀を、虚飾と真情の間をたゆたい、華やかに生きた作家の人生が堪能できる。
文庫本のカバーには、ヘルメットの隊列から一人の兵隊が後ろを振り向く姿が描かれている。...