「学歴フィルター」を就活生はどうすれば乗り越えられるか キレイゴトぬきの就活論(5)

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■学歴フィルターは存在する

「社会人と話すのが怖い」「失敗が怖い」この二つの感情が混在している学生が意外なほど多い――失敗をしないための鍵となるのは、「社会人慣れ」だ、と石渡氏はアドバイスをしている

 いかに「学歴不問」「実力本位」と企業側がアピールしても、それを真に受ける人はそう多くないだろう。採用にあたっては、ある程度、大学のランク、偏差値も考慮していると考える方が普通だ。

 就活に詳しいライターの石渡嶺司さんは、こう解説する。

「昔は、企業によっては、指定した大学の学生しか受験できない、『指定校制度』がありました。今も大手企業には、『ターゲット校』を設定しているところがあるのは事実です。ただし、かつての指定校ほど厳しい縛りではないので、学生の実力、努力次第では挽回も可能です。学歴フィルターはあるけれども、乗り越えられないものではありません」

 では、実際にはどのようなことをすれば「挽回」が可能なのか。石渡さんの新著『キレイゴトぬきの就活論』をもとに見てみよう。

 同書によれば、就活に失敗する学生には「無謀な大企業狙い」「失敗恐怖症」といった傾向が見られるという。

「無謀な大企業狙い」をする学生は、大企業の説明会や選考にしか参加しない。しかも、その企業や業界に関連した知識を仕込まないまま志望する。当然、ほとんど失敗する。

「失敗恐怖症」の学生というのは、面接で失敗したらどうしよう、といったレベルの不安を抱えているのではない。もっと大きな「就活」そのものへの恐怖感を持っている学生がいるのだという。

 本来、学生のためには模擬面接や業界研究セミナー、企業主催の交流会など、就活に慣れるための場がいろいろ用意されている。ところが、こうしたイベントに「失敗恐怖症」の学生は参加しない。

「面倒」「行きたい業界の企業が来ていない」「もう予定が入っている」等々、様々な理由をつけて行かないのだ。表向きの理由はどうあれ、内実は「社会人と話すのが怖い」「失敗が怖い」だ、と石渡氏は指摘する。そして「無謀な大企業狙い」と「失敗恐怖症」を兼ね備えた学生が結構いるのだという。

「この二つの感情が混在している学生が意外なほど多い。『大企業には行きたいが、挫折は経験したくない』という虫のいい考えの持ち主である。こういう学生が、筆者が取材した限りでは大学の難度が下がれば下がるほど増える」(同書より)

■社会人を怖れるな

 こうした失敗をしないための鍵となるのは、「社会人慣れ」だ、と石渡氏はアドバイスをしている。

「偏差値などランクを乗り越えている大学、学生に共通しているのは、社会人との接点が多いということです。ゼミでもサークルでもなんでもいいのですが、早い段階から社会人との接点がある学生は大学の難易度とは無関係に失敗恐怖症に陥りにくい。

 理由は簡単で、彼らは『社会人も人間である』『人間である以上失敗もする』『社会人とも人間として普通に接することができる』という当たり前のことをきちんと理解できているからです。

 こういう学生は、企業側の『学歴フィルター』を乗り越えることができます。

たとえば、ある週刊誌で『使えない大学』4位とされた大阪経済大学。ここは全学的に『ZEMI‐1グランプリ』というプレゼンテーションのイベントを実施。ゼミで調べたことを発表するのですが審査員は学外の社会人です。そのため、結構厳しいことを言われて、半泣きになる学生も続出。が、その経験が学生を成長させ、就活ではうまくいく学生が多い大学です。『使えない』どころか、現在では『使える』大学として、偏差値以上に関西圏では高く評価されている大学、と言えるでしょう」

 大阪経済大学のような、学生と社会人の接点を持たせる教育プログラム・イベントを用意する大学は多い、と石渡氏は話す。

 では、これから就活を迎える学生はどうするべきか。

「電話してください」

と石渡氏は話す。

「たとえ説明会への参加を学歴フィルターではねられても、そう簡単にめげない。担当者に直訴して参加したい旨を訴えたりします。

 企業もそこまでする学生をむげにはできません。断られたのに、説明会当日に、早目に行って、立ち見でもいいから、と訴えた学生もいます。

 それでも絶対に希望企業の内定が取れるわけではないにしても、こういう行動力のある学生は必ずそれなりの結果を残しています」

 こういう努力なしで就活に失敗した学生に限って、学歴のせいにすることも多いのだという。

デイリー新潮編集部

2017年1月25日掲載

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