新春ドラマ採点 「キムタク」「草なぎ」対決に低迷の「西内まりや」「香里奈」
SMAP解散直後から、同じクールでドラマが始まったキムタクと草なぎ剛。大晦日の「森くんがやってきた木村抜きの忘年会」の記憶がこびりついて、なかなかどうして現実とリンクさせて見ないわけにはいくまい。事実、
「人一倍プライドの高い木村は、それを満たすコンサートという場所を失いました。更に、同じクールの草なぎドラマに数字で負ければ、存在意義を問われる。彼をどう使うかという問題がつきまとうことになる」
と芸能プロ幹部が言う通り、業界最注目の元同僚同士の作品である。
「絶対に失敗が出来ない状況で、カネをかけて作りがしっかりしている。きちんと見てくれれば損はさせませんよというTBSの気概を感じさせます」
と、コラムニストの林操氏が評するのが、木村拓哉(44)の「A LIFE〜愛しき人〜」である。米国の病院に所属し、ゴッドハンドの名をほしいままにするキムタク外科医。それが、竹内結子扮する元恋人の父親で大型私立病院長の心臓手術を依頼され、帰国するところから物語は始まる。
■リアリティに欠けるキムタクドラマ
木村拓哉
「気になるのが、要素を詰め込み過ぎたことから突っ込みどころが少なくない点」
林氏はそう指摘し、具体的に木村の「心臓血管と小児外科を専門とする職人外科医」という設定に疑問符を突きつける。
「父親の状態が安定したかと思ったら、今度は竹内に脳腫瘍が見つかって、木村がこの手術を頼まれる。専門性が進んだ現代医療で果たして兼務や専門外の手術をするなんてことがあるのか、と思ってしまいました。TBSの伝統からすると、山口百恵の『赤いシリーズ』にも通じるような世界です」
ひそみに倣ったわけでもあるまいが、医学博士の中原英臣氏に聞くと、
「心臓外科と小児外科が専門という役柄は、実はありえないわけではありません。というのも、子供特有の先天的な心臓疾患を、心臓外科の専門医が診ることはままあるからです。それよりも気になったのは、キムタクが成人の脳腫瘍を手術する可能性があるということ。心臓外科医が脳神経外科の手術を行なうなんてことは現代では考えられず、スーパーマンを演じていると見るべきでしょう」
更に、過去に4度テレビ化された山崎豊子「白い巨塔」に触れて、
「最初に主人公が罹る不治の病は胃がんでした。2003・04年版では、胃がんはもう治る病気になっていたので、食道がんに変更されています。いやしくも医療ドラマを謳うならば、踏まえるべきものをないがしろにすると、リアリティに欠ける作品になってしまいますね」
■「木村より草なぎ」
草なぎ剛
口説で煙に巻き、画策も奏功しまくる詐欺師。家族を惨殺された復讐に燃えるアンチ・ヒーローを演じるのが、「嘘の戦争」(フジ)の草なぎ剛(42)だ。
「韓国ドラマの翻案で草なぎがメインだった『銭の戦争』の“続編”。展開の早さは前作同様、視聴者を飽きさせない。“刺されても内臓の致命傷は避けて生き延びた”なんてのは突っ込みどころですが、よくできた大衆演劇」(林氏)
確かに、パソコンにUSBを差し込むだけで機密情報を全て抜いてしまえたりするあたり、異議申し立ての声がなくはない。もっとも、目くじらを立てつつも、こたつでみかんなのが新春ドラマ。実際、木村作品に及ばないまでも、平均12%近い視聴率を維持している。
「木村より草なぎの演技の方が良かったですね」
こんな風に後を受けるのが、ライターの吉田潮氏。
「軽快な詐欺師でありつつ心に闇を抱えた二面性のある難しい役どころながら、前作と比較して、演技力の向上が見えます。変化があったのか、新しい自分を見つけたのか、いい顔をするようになりました」
■バブルの“異臭”
その草なぎの稼いだいわば貯金をあっさり借金にしてしまいかねないのが、フジのヒロイン勢だ。
まず、「突然ですが、明日結婚します」という身もふたもないタイトルが付いた月9について。
「もともと竹野内豊主演のバディもの、つまり相棒物語で進めていました。ただ、彼と監督がモノ作りについて突っ込んだ話し合いを持つなかで、折り合えないということになり、一から練り直しになったのです」
と明かすのは芸能関係者。
「当然、主演の西内まりやへのオファーは急で、“海外に留学する予定で3カ月空けていた”と会見で話していました。相手役はロックバンドのボーカルで本作が俳優デビューとなります」
いかにも足元が覚束ない陣容だが、別の関係者は、
「常盤貴子の『悪魔のKISS』とか深田恭子の『神様、もう少しだけ』など、フジテレビが抜擢もので成功した例はあるし、一世を風靡したトレンディドラマだって同じ。全く売れていなかった浅野ゆう子の起用は、彼女しか出てくれる人がいなかったからなんです」
こう半畳を入れる。では、月9評価を林氏に聞くと、
「専業主婦になりたいOLと絶対結婚拒否の局アナのラブストーリーですが、そもそも局アナとの恋が時代錯誤。全編に漂うバブルの“異臭”には思わず鼻をつまんでしまいました。いっそ、このドラマができるまでのドキュメンタリーを見てみたいと思うほど、皮肉な気持ちになります」
香里奈
初回視聴率は8・5%で、敗戦処理役には先発が務まらなかったというシンプルな解答がここに。次いで、やる気のなさが画面いっぱいに広がっているのが、ベッド上での醜聞写真から再起を図る香里奈(32)主演の「嫌われる勇気」。155万部を記録したアドラー心理学本を原案とした捜査一課の物語という触れ込みに訳がわからなくなるのは当然で、林氏が、
「出来損ないの刑事ドラマであって、心理学とは1ミリも噛みあっていない。もはやこの番組を見たというと周囲から失笑を買うレベルで、ネタとして見る以外の価値はありません」
そう断じる一方で、フジ関係者によると、
「なんとか復活したいという香里奈側の提案に、フジが温情を見せたということでしょう。断る勇気が必要だったと思いますけれど」
初回視聴率は8・1%、2回目は6・4%と低迷している。
特集「『キムタク』『草なぎ』の意地が激突 大人の鑑賞に堪える『新春ドラマ』採点表」より