大韓航空のエンジン出火事故 “乗ってはいけない”が航空業界の常識だった

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 万が一、上空を飛行している時に事故が起こっていたら、と考えるとゾッとするではないか。大韓航空機のエンジンが突如として火を噴いた事故。が、航空業界や専門家の話を総合すると、大韓航空は事故前から「乗ってはいけない」航空会社だったようで……。

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 事故を起こしたのは、離陸のため東京・羽田空港のC滑走路を滑走中だったソウル・金浦空港行き大韓航空2708便である。5月27日午後0時40分頃、左エンジンから出火した同機は緊急停止。乗客乗員319人は緊急脱出したが、機内は相当な混乱状態に陥っていたと見られ、

「エンジンが火を噴き、急ブレーキがかかった後、『様子を見て、この機は離陸し直します』との機内アナウンスがあったと証言している乗客がいる。避難誘導も的確ではなかったようです」(全国紙デスク)

 事故原因は調査中だが、エンジン内部のタービンブレードと呼ばれる部品数十枚が根元から折れていたことがすでに判明している。

■会長の罵倒

「今回の事故では、まず1枚か2枚のタービンブレードが欠損。それがエンジン内を動き回って他のブレードを破損させ、燃料配管も傷つけてしまって引火したのではないでしょうか」

 とは、航空評論家の諸星廣夫氏。同じく航空評論家の秀島一生氏は、

「なぜタービンブレードの破損を事前に予測できなかったのか。大韓航空の整備士の質の低下も、事故の一因である可能性がある」

 では、何が整備士の質の低下を招くのか。まず考えなければならないのが、

「コスト優先主義の影響です。大韓航空はアシアナ航空やLCCなどとの熾烈な価格競争の渦中にある。ライバルとの争いに勝つためにコストカットを続けた結果、整備体制がどのように変わっていったのかを調べる必要がある」

 と、秀島氏は続ける。

「“キャリーオーバースタンダード”(修理持ち越し基準)の問題も、今回の事故と関連があるかもしれない。墜落などの事故に繋がらなそうな故障であれば、修理や交換はその場で行わなくても良いという判断が現場で下されることがあるのですが、その基準が年々甘くなっているのです」

 また、秀島氏は大韓航空の経営体質を象徴する出来事として2年前の「ナッツリターン騒動」をあげる。

「機の最高責任者である機長が、女性副社長の一言によって搭乗口まで引き返してしまう。そんな会社に安全性を求めるのは、そもそも難しい気がします」

 騒動を受けて副社長を辞任することになった彼女の父親、大韓航空を傘下に収める韓進グループのチョ・ヤンホ会長は今もトップに君臨しているが、

「彼は5月4日、大韓航空の操縦士労組から侮辱罪などで告訴されました」

 とは、韓国事情に詳しいジャーナリスト。

「ある副機長が飛行前の業務内容をフェイスブックで紹介したところ、会長はそれにコメントを寄せる形で、『操縦士は飛ぶか飛ばないか決めるだけなのに、それがしんどいだって?』『車の運転より簡単な自動操縦装置で飛ぶだけ』などと罵倒。これに対して労組が告訴したわけです」

 命を投げ出す覚悟がない限り、こんな男がトップを務める会社の飛行機に「乗っていい」はずがない。

「ワイド特集 言ってはいけない」より

週刊新潮 2016年6月9日号掲載

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