コンビニとアマゾンが原因のゴミ屋敷が多発中!〈清掃人は見た! あなたの近所の隠れた「汚部屋」(3)〉

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 異常なまでに「清潔」を良しとする現代社会の陰では、その反対の「汚部屋(おべや)」が増加しているという。ノンフィクション・ライターの福田ますみさんによる清掃業者への取材で明らかになったのは、そうした部屋の住民の“傾向”だった。医者や介護士、公認会計士、教師……人の世話をする仕事、常に緊張を強いられる人々の住居が、汚部屋になりやすいのかもしれないとの証言を、第2回では取り上げた。

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「清潔」を良しとする現代社会の陰では、その反対の「汚部屋(おべや)」が増加している

 ストレスだらけの現代社会では、どこにゴミ部屋を作らしめる落とし穴が口を開けているかわからない。そして、社会情勢の変化がそれを後押しする。

「単身者の急増に比例してゴミマンションが増えているのはまちがいない」

 と語るのは、足立区に本社のある「ダストコム」の藤岡大哲社長。

「みなさん、ちゃんとした社会人です。ただ帰宅すればワンルームマンションにひとり。恋人もなく来客もないという場合が多い。彼らはそれでもいいと思っている。なぜなら、SNSで24時間、バーチャルにつながっているから、リアルで人と付き合う必要は特にないんですよ。それで誰も来ない自分だけの世界を趣味のもので埋めるんです。うちへの依頼には20~40代の男性会社員も多い。フィギュア、ゲーム、CD、DVD、雑誌とか、趣味で大量にため込んで捨てられなくなったケースがあるんです」

 だが、フィギュアが200とか300、そこにCDやゲームが堆(うずたか)く積み重なった部屋を見て、藤岡さんは不思議に思うことがある。自分が好きで買ったものなのに、包装も解かずに無造作に放り出しているのだ。

「今は、新しいモデルが次から次へと発売されるので、最新のものを一刻も早く手に入れなくちゃと、強迫観念のようになっているんじゃないんですか。買ったこと自体に満足して、あとは無関心になる」

 そうした部屋には必ず、アマゾンや楽天などネット通販の段ボール箱も散乱している。宅配サービスが発達し、家に居ながら何でも手に入る。つまり、ネットでのサービスが充実すればするほど、ゴミマンションは増えるというカラクリだ。

 ネットの普及以前、汚部屋の急増に大きく寄与したのはなんといってもコンビニだった。弁当、新聞、雑誌、ビールの空き缶、ペットボトルなど、ゴミ部屋のゴミの多くは、コンビニ由来のものばかり。24時間、手軽に物が手に入る環境があれば、それに伴ってゴミが増えるのは当たり前の話だ。

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(4)へつづく
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「特別読物 食事中の閲覧注意!『ゴミ屋敷』清掃人は見た! あなたの近所の隠れた『汚部屋』――福田ますみ(ノンフィクション・ライター)」より

福田ますみ(ふくだ・ますみ)
1956年、横浜市生まれ。立教大学社会学部卒業後、専門誌、編集プロダクション勤務を経てフリーに。2007年、『でっちあげ』で新潮ドキュメント賞受賞。今年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞受賞作を書籍化した近刊『モンスターマザー』も話題となっている。

週刊新潮 2016年5月5・12日ゴールデンウイーク特大号掲載

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