ゴミ屋敷になりやすい職業4割はこういう人たち〈清掃人は見た! あなたの近所の隠れた「汚部屋」(2)〉
職業には“ある傾向”が見られる
ノンフィクション・ライターの福田ますみさんが、現代社会の陰で増殖中という「汚部屋(おべや)」の実態を描く。前回は、“壁という壁にゴキブリがぎっしり”なゴミマンションの様子や、“男性より女性の方が多め”という依頼者の実状を、清掃業者の証言から紹介した。
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ナースがダントツ
清掃を依頼してくるのは一体どのような人たちなのか。その職業には、ある傾向が見られるようだ。
「ナースがダントツに多いな」
と言うのは、ゴミ屋敷清掃と遺品整理の代行業「孫の手」の佐々木久史社長である。
「ドクターも多い。介護士さん、ケアマネさんなど介護関係も少なくない。依頼のうち、4割ぐらいはこういう職業の人たちだね」
彼ら/彼女らを観察し、佐々木社長はある“仮説”にたどり着いたという。
「みんな、人のお世話をする大変な仕事でしょ。それで神経をすり減らすことも多いだろうから、エネルギーを吸い取られて自分の世話をしなくなってしまうのかもしれない」
船橋市に本社を置く「エコフレンドリー」の代表取締役・坂田栄昭さんも、「看護師が圧倒的に多い」と言う。
彼の“分析”はこうだ。
「一番の理由は夜勤ですよ。昼夜逆転するから、まずゴミを捨てられない。料理を作るのもおっくうになってコンビニ弁当ばかりになる。夜のゴールデンタイムのテレビ番組を見られないから、やたらDVDがたまる。ゴミがたまる条件がそろってしまっているんです」
14年前、引っ越し業の立ち上げと同時にゴミ屋敷の清掃代行も行うようになった「クリーンエンジェル」代表者Y氏は、別の傾向を見ている。
「僕の中では、医者や国家公務員、看護師や教師、それにいわゆる『士業』、弁護士とか公認会計士、司法書士なんかがめちゃくちゃ多いっていう印象があるね」
外では常に緊張を強いられる人々である。部屋では思い切りだらけた生活をして、精神のバランスを保っているのだろうか。
社会的地位の高い人たちのことだから、周囲の部屋には、汚部屋の清掃を頼んだなんてことは絶対に知られたくない。そこで、
「そういう客のために、うちではゴミをゴミ袋ではなく、すべて段ボールに梱包して、引っ越し業者を装って運び出している。そこまでして、大体平均は30万~40万ってところかな。100万を超えることはそれほどない」(同)
その数少ないケース、ゴミの総量が4トントラックいっぱいになり、100万円を請求した相手は女教師だった。Y氏はその教師から1年後に礼状をもらった。そこにはこう記されていた。
「あの時の100万円は私にとっては痛手でした。でもこれは、自分自身への社会的制裁だと思って納得することにしました。ありがとうございました」
これだけの値段がかかるものだから、家計に余裕がある人しか、業者に清掃は頼めない。裏を返せば、ここに紹介している人たちは氷山の一角。世間には、先立つものがないために、変わらずゴミの山に埋もれて暮らさざるをえない人がゴマンといるということだ。
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