パナマ文書掲載唯一の“公職” 加藤康子内閣参与は「一度も聞いたことがありません」

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 日本時間5月10日午前3時、「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)によってパナマ文書のデータが公表された。本誌(「週刊新潮」)は公表に先駆け、日本関連ファイルを独自に入手。記載されていた企業や経営者にタックスヘイブンでの法人設立の経緯を尋ねてみると、「租税回避が目的ではない」(伊藤忠商事)、「コンプライアンスに基づいています」(丸紅)といった答えのほか、「怪しい香港の業者と名刺交換したら勝手にペーパーカンパニーを作られた」(山口県で漢方薬販売をてがける70代男性)と、“晴天の霹靂”なケースもあった。

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 かと思えば、こんな“体験型”も。北関東にある金属プレス加工会社の社長(46)は、

「私は身に覚えがあります」

 としながら、

「東日本大震災を目の当たりにして、この先日本はどうなるのだろうと不安を感じていました。で、興味を覚えて海外投資マニュアル本を読み、2年後には実際にオフショア会社を作ってみた。マニュアルに沿って会ったこともない業者にメールを出し、20万円程度の手数料を払ったら、とんとん拍子でセイシェルに設立できました」

 ここまでのやり取りは日本語で賄えたというのだが、

「そもそも大した資金もなく、200万円程度を移しただけです。英語も話せないので、株だとか投資だとか、何もできないまま現地の銀行から届いた手紙を放置して眠っている状態です。取り潰すのも面倒で、今は『いい勉強になったな』くらいに考えています」

 全く異なる目的を抱いたのは、都内にある玩具メーカーの社長(43)である。

「1年前から家族と香港に住んでいます。2年後には帰る予定なのですが、こちらの生命保険は、BVI法人を発行・受取人とすることができ、その方が最低保証が付帯して割が良いのです。だから設立して保険に加入しました。日本にいる時に作ったので、パナマ文書では私の住所が自宅の千葉県になっているのでしょう。香港には、こうした斡旋をしてくれる会計事務所がたくさんあるのです」

■加藤康子参与は…

 さて、こうした民間人とともに、現在のところ唯一「公職」から名が挙がっているのが、都市経済評論家の加藤康子・内閣官房参与(57)である。故・加藤六月農水相の長女で、安倍政権の目玉である一億総活躍担当相の義姉にあたる彼女は、89年にウエディングドレスの輸入販売などを手掛ける「トランスパシフィックエデュケーションネットワーク」社を設立。現在代表を務めている。

 一方でパナマ文書には、バージン諸島に設立された法人の株主として有名学習塾「東京個別指導学院」が登場。が、その連絡先として、件のトランス社の古い本店所在地が記載されていた。トランス社は同塾の大株主でもあるのだが、

「社内調査を行った結果、弊社が租税回避地に会社を設立した事実はありません」(東京個別指導学院広報・IR室)

 と言い、加藤参与は、

「当該場所に東京個別指導学院様が存したことは一切ありません。(法人設立の05年)当時の代表や従業員からも、タックスヘイブンの件は一度も聞いたことがありません」

 或いは、どちらかがウソをついているのか。

「事実関係調査のため、弁護士より(学院に)内容証明と、(当時の代表に)質問書をお送りしています」(同)

 というのだが……。

 租税法に詳しい立正大学法学部の長島弘准教授が言う。

「節税と脱税には雲泥の差があります。例えばオフショア会社を使って株主名義をいくつも変え、また偽名を使うなどして当局の所得の捕捉を困難にすれば立派な脱税ですが、企業活動のなかで経済的合理性、つまり事業上の需要があり、正当に税務申告を行っている以上は税額軽減行為となっても認められることがある。今回は、それらを見極める必要があります」

 一斉公表に踊らされるのでなく、慎重な吟味が不可欠だというのだ。

「特集 日本関連400件を全調査!『パナマ文書』掲載企業・掲載個人の言い分」より

週刊新潮 2016年5月19日菖蒲月増大号掲載

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