「良かれと思って」東日本大震災後に熊本へ移転していた不運な企業

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“甲張(こうば)り強くして家押し倒す”。こんな例えがあるように、時として良かれと思って取った行動が、悲劇を産むことも少なくない。5年前のあの日以降、震災のリスクを避けるために熊本へ本社を移転した企業もあり、結果的に不運を招いてしまった。

熊本城の損害は大きいが

 帝国データバンクによれば、東日本大震災発生から約1年で、東京や神奈川など東日本から九州や沖縄へ本社を移転した企業は37社。熊本は4社で、そのうち1社は上場企業だった。経済誌デスクの解説では、

「東京の墨田区から熊本市内へ本社を移転したのは、東証マザーズ上場で生花大手のビューティ花壇でした。2003年に熊本から東京へ進出しましたが、人材流出に悩まされ続けた挙句、震災で損害を被ってしまった。それで“古巣”に舞い戻ったわけです」

 その後も、ソニーの100%子会社で半導体製造のソニーセミコンダクタマニュファクチャリングなどが熊本へ。その数は、今年3月までに80社を超えたとの調査もある。

「話題になったのが、東証一部上場でコンサルタント大手のビジネスブレイン太田昭和です。2年前に熊本BPOセンターを新設し、4月に“本社機能”を移転。県庁などと協力して、企業誘致の事業に乗り出した矢先の大地震でした」(同)

 本社機能の地方移転は、政府が“法人税減免”などで後押ししているが、熊本県は“成果を上げている自治体”として知られていた。地元紙記者によれば、

「熊本は中小、零細企業も利用できる補助金制度が他県よりも充実しています。その額は最大50億円で全国トップクラス。今年1月に都内で開かれた初の企業誘致セミナーでは、蒲島郁夫知事が“企業の命運をかけた選択を全面的に支える”と熱弁をふるっていましたが……」

 わずかな救いは、移転した上場企業2社の損害が小さく、株価も急落しなかったことかもしれない。“減災”と防災対策は難しく、安住の地は無し。

週刊新潮 2016年5月5・12日ゴールデンウイーク特大号掲載

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