日本のマスコミの「自虐志向」には要注意! 伊藤洋一氏の「実践的情報処理術」
■マスコミの自虐志向
大事件が起きたら日本のテレビ報道からは距離を置いて、少し脳内をクールダウンしたほうがいい――伊藤洋一さんは、新著『情報の強者』でこうアドバイスしています。
自分に直接関係のない事件のディテールを追うよりは、その時間を海外ニュースなどのチェックに使ったほうが、バランスが取れる、というのが伊藤さんの考えです。
さらに、伊藤さんは、日本の報道の「バイアス」についても注意しておくべきだ、とアドバイスしています。どうしても、自国についてネガティブな情報を伝えがちだというのです。以下、『情報の強者』から引用してみましょう。
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■アメリカは怒っていたか
日本の報道は、日本についての海外の反応を実態より大きく伝える傾向がある、ということも頭に入れておきたい。
たとえば、経済摩擦や政治問題などで海外諸国と軋轢(あつれき)が生じたときに、「アメリカは日本に強い圧力をかけている」「日本に非常に腹を立てている」など、実態以上に過敏に報じる。
日本の報道だけ追っていると、非常に深刻な事態に思える。
株安や円高を惹起したり、政治不安を煽ったりするからなのだが、相手国の報道を見ると大した問題ではないことが多い。
少し前の例で言えば日米自動車摩擦。デトロイトの街角で日本車に対する反感を持つグループが日本車を道路に引き出してそれをハンマーで叩くなど破壊行為を行ったということがあった。新聞を含む日本のメディアは、こぞってこれを大きく報道し、「アメリカはこんなに怒っている」といった報道を行った。
■それでも日本車は人気だった
むろん、デトロイトの一角でそういうことが行われたことは事実だが、一方で「日本車は品質が良い」として日本の車を買い続けている消費者はアメリカには沢山いた。しかし、そうした事実は過敏な報道の陰に隠れてしまい、事実の把握がアンバランスになってしまったのだ。今でもトヨタはGMに次ぐアメリカ第2位の販売台数を誇る自動車会社である。
なぜ報道は大げさになるのか。そもそも日本人は、海外からどう思われているかをとても気にしていて、過敏に反応してしまう傾向が強い。
加えて、事態が深刻であるほどニュースバリューが高まるというメディアの体質がある。実態から飛躍し、客観的な視点を失しても、「日本が大変だ」という内容のほうがニュースになる。とりわけ海外のニュースは特派員が発信する。
ここにワナがある。
■1面を飾りたいという欲
普段は、彼らの取材結果はあまり大きく扱われない。しかし、いざトラブルが起きると、1面や番組トップを飾れる。ただしそのためには「派手な絵」や「深刻な事態」が必要だ。そのため記者には、「自分のいる場所ではこんな大変なことが起きています」とアピールしたい気持ちがどうしても混じってしまう。
これは日本にいる外国人記者にも似たような傾向があるように思う。
ニュースを採用するデスク側にも問題がある。
日本のマスコミは、現場から離れたデスクがニュースの決定権を握っている。本来ならば、現場の大げさな取材報告をチェックするのがデスクの仕事なのだが、現場感覚や記者としての感覚が鈍っているため、数字や売上、紙面や番組の「見栄え」やステレオタイプの価値観で判断してしまうことが少なからずあるのだ。
記者もまた、このデスクに採用されるように記事を書く。双方がバランスを崩してしまうのだ。この点、海外の新聞や通信社には、「生涯一記者」のような専門性の高い書き手が多い。ここは日本と違うところだろう。
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現代ではあまりにもニュースや情報が多いため、方針なしで取り入れていると収拾がつかなくなってしまう。伊藤さんは、情報を得る段階から情報を制限する、「取水制限」ならぬ「取“報”制限」を心がけているという。
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