「創価学会」信者の祖父を「幸福の科学」信者の孫が殺害した河口湖事件

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 暗闇の中で血塗れの包丁を握り締め、激しい動悸に襲われながら、少年は何かを祈ったのだろうか。信仰心の厚い家族の間で起きた凄惨な事件。実は、犯行の動機にも“宗教”の影が取り沙汰されているのだ。

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被害者宅

 発見された老夫婦の遺体の状態からは、凄まじいまでの殺意が窺えたという。

 ホテルや旅館が軒を連ねる、河口湖畔に近い住宅街。その一角にある木造一軒家で9月27日、三代益夫さん(83)と、妻のセツ子さん(81)が変わり果てた姿で見つかった。山梨県警担当の記者によれば、

「夫婦は2階にある別々の寝室で布団の上に倒れていました。死因は共に出血性ショックです。胸や背中を執拗に刺され、肺などの内臓に達する深い傷もあった。周辺住民が悲鳴を聞いていないため、深夜に寝込みを襲われたものと考えられていました」

 行楽シーズン真っ只中の観光地を襲った惨殺事件は、しかし、翌日に急転直下の解決を迎える。県警が逮捕したのは県立高校3年生の少年(18)。あろうことか、被害者の“孫”であった。

 現場近くの美容室の女性オーナーが振り返る。

「セツ子さんは長いこと、河口湖ホテルの従業員でね。昭和天皇がホテルに宿泊された時に、食事を配膳したのが何よりの自慢でした。別のホテルで働いていた旦那さんが定年退職してからは、仲良くのんびりと暮らしていたんです。それなのに、まさかお孫さんに殺されるなんて……」

 近隣住民は、母親の車で足の悪い祖母の介護に訪れる少年の姿を度々、見かけている。だが、彼は県警の事情聴取にこう語ったのだ。

「祖父母に恨みがあった。高校卒業後の進路について意見が食い違っていた」

■“HSU”への進学

 犯行の動機が“進路”とはどういう意味なのか。謎を解くカギになりそうなのは、彼のフェイスブックである。そのトップページには、〈HAPPY SCIENCE UNIVERSITY(HSU)〉の文字が躍っている。これは、幸福の科学が今年4月に開校した“私塾”のことだ。さらに、少年が校舎をバックにピースサインをする記念写真も掲載されていた。

 彼の友人が明かす。

「あいつは大人しい性格で、口ゲンカする姿すら見たことがない。ただ、仲間内では“幸福の科学の会員なんだ”と話していた。自宅の塀にも幸福実現党のポスターが貼ってありましたよ」

 また、彼がHSUに進学するとの噂もあったという。

 一方、殺害された祖父は創価学会の信者。とはいえ、それほど熱心に活動していたわけではないようで、

「聖教新聞は取っていましたが、勧誘されたことも、選挙の時に公明党の応援を頼まれたこともありません。そもそも、三代さんのお宅は近所にある臨済宗のお寺の檀家ですからね。毎朝、夫婦でお墓参りをするほど信心深かった」(近隣住民)

 動機解明を急ぐ県警の見立てについて、先の記者が解説するには、

「少年がHSUへの進学を希望していた可能性は高い。ただ、そのことに祖父母から“待った”が掛かったのでしょう。学会員である祖父が創価大に進むよう諭したというより、文科省から認可申請を却下され、大卒資格を得られないHSUへの入学に難色を示したのではないか」

 幸福の科学にも見解を尋ねると、

「亡くなられたお二人のご冥福をお祈りするとともに、少年の更生とご家族の心のケアに尽力し、教団としての導きの力をもう一段強めて参ります」

 少年の衝動を前に、信仰は無力だったという他ない。

「ワイド特集 ふとどき者と人のいう」より

週刊新潮 2015年10月15日神無月増大号掲載

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