魔王が嘱託殺人を言い出した「赤とんぼ研究」殺人事件
被害者は本心から“殺してくれ”と言ったのか――。一般人である裁判員らがそれを判断することになるのだから見物である。共同で赤とんぼを研究していた元福井大准教授の前園泰徳(42)が教え子の菅原みわさん(25)を殺した事件。ここへきて前園は「嘱託殺人だった」との主張を明確にしたが、法廷ではいかなる攻防が繰り広げられるのか。
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「菅原さんから“殺してください。もう無理です”と頼まれた」
前園がそう述べたのは3月31日。福井簡裁で開かれた勾留理由開示の法廷でのことだった。
「嘱託を受け入れて死に至らしめてしまった」
とも話した上、
「菅原さんや、ご遺族には本当に申し訳ない」
と、謝罪の言葉も口にしたのだが、全国紙の社会部デスクによれば、
「一方の検察は前園側の主張を認めず、4月3日に普通の殺人罪で起訴。今後行われる公判でも前園が嘱託殺人を主張するのは間違いなく、検察側と弁護側が全面対決する構図になる。しかもこの事件は裁判員裁判で審理されることが決まっていますから、なおさら注目が集まるでしょう」
■“真意”が争点
また、裁判員は前園と菅原さんの関係がいかなるものだったのかという点についても頭を悩ませることになろう。
菅原さんは自らのFacebookで前園のことを「魔王様」と呼んでいたが、その理由は不明。それどころか、妻子ある前園と菅原さんが男女の関係にあったのかどうかも今のところ分かっていないのだが、前園は殺害までの経緯を次のように供述している。
〈菅原さんは普段から、医師に処方された睡眠薬を服用していた。(事件のあった)3月12日、菅原さんは多量の睡眠薬を飲んで苦しみ、“殺してください。もう無理です”と言った。だから彼女の首を絞めた〉
先の社会部デスクは、
「検察は、前園は嘱託殺人を装って罪の軽減を図っている、と見ています。何しろ、殺人と嘱託殺人では法定刑に大きな差がある。殺人は、“死刑または無期若しくは5年以上の懲役”。それに対して、嘱託殺人は“6月以上7年以下の懲役または禁錮”です」
もっとも、犯行現場は路上に停めた車の中という“密室”で、「殺してくれ」という発言が実際にあったのか否かを完全に解明するのは難しいが、
「被害者が実際に“殺してほしい”と頼んでいた可能性があるとするなら、裁判では、彼女の“真意”がどうであったかということが争点になります」
と、筑波大学名誉教授の土本武司氏(元最高検検事)。
「例えば激しい口論の中で女性が“もう殺してよ!”と口にしてもそれは彼女の真意ではない。どのような状況で発言が出たのかを見極める必要があるのです」
前園の起訴を受け、
〈被告人の口からは真実が語られているとは思えず、保身に走っていると感じざるを得ません〉
とするコメントを発表した菅原さんの両親は、
「遺族が求刑意見や被害感情を陳述できる“被害者参加制度”に基づいて公判に参加する意向を示しています」(先の社会部デスク)
注目の公判は、早ければ今年夏頃に始まる。
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