4年で1億5000万 生涯賃金を上回る補償金 「原発補償金」ジャブジャブの日常的荒廃(3)
東日本大震災から4年。原発事故は収束せず、今なお8万人の避難民が不自由な生活を強いられている。「『原発補償金』ジャブジャブの日常的荒廃(1)(2)」では俄かにもたらされた補償金バブルにより、歪んでしまった避難民と周辺地域の悲劇的な風景を追った。
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長引く避難生活で不満や鬱憤が溜まっているのは理解できるが、無軌道にお金を使うのはいかがなものか。これを可能ならしめる東電の補償金の内容について、説明しておこう。
震災時に避難等対象区域に住民票があった人への補償として、まず2011年3月から、避難民1人につき、精神的損害賠償として月10万円の慰謝料が支給されている。赤ん坊から老人まで一律で、震災後に生まれた子どもにも支払われる。
それとは別に就労不能損害賠償がある。震災前の給与と現在の収入を比べ、減収分を補填するものだ。
さらに家財道具や土地・家屋への賠償金がある。また避難先で新たに住宅(持家)を確保した人には、それにかかった費用の一部(賠償金では足りない部分)を補填している。
先の慰謝料については、さらに、一昨年末の文科省の原子力損害賠償紛争審査会の指針決定を受け、新たな措置が付け加えられた。
「現時点で放射線の年間積算線量が50ミリシーベルト超の帰還困難区域と大熊町、双葉町の方々に、移住を余儀なくされたことに対する慰謝料として、1人700万円を一括で上乗せすることになりました。過去に5年分を一括払いした分など、すでにお支払いした約750万円と合わせ、計約1450万円となる。いくつかの例外を除けば、これが精神的損害慰謝料の全てとなります。他の2区域につきましても、最大でもそれと同額に達するまでが目安となりますが、避難指示が解除されて以降は、1年間を相当期間として、月10万円をお支払いします」(経産省関係者)
こうした補償により、たとえば、楢葉町で農業をやっていた60代の男性は、
「母と二人暮らしでした。母は2年前に亡くなりましたが、慰謝料はすでに今年2月分までを一括して受け取っていた。江戸時代からあった屋敷や山林、トラクターなど農機具の賠償など、諸々合わせて、1億1000万円ほど支給されました。しかし、長年住み慣れた家を元通りにすることは叶わず、この倍はもらっていいと思っています」
帰還困難区域で持家ではなかった4人家族が受け取る補償は、約8000万円となる見込みだ。また先述の通り、持家があり、避難先で新たに住居を確保した4人家族では、400~500もの世帯が1億4000万円もの補償金を受け取る。さらに田畑や山林も所有していた避難民の中には、総額1億5000万円を超える補償を得る世帯もあり、その数は200前後に迫るものと見られている。
「震災前の福島県民の平均年収が約300万円だから、その50年分ですよ。わずか4年で生涯賃金を上回る収入を得る家族がごろごろ出ることになる」(県関係者)
そもそも高額補償を得られるのは、収入や資産が多かった世帯ではあるが。
■「6月危機」勃発!?
これらの補償のうち、東電は就労不能損害賠償を、先月末、打ち切った。しかしこれについては今後、ハレーションが起こる可能性がある。というのも、東電はこの終了を1年前からプレス・リリースで告知しているが、皆が皆、報道を見ているわけではないからだ。
富岡町の担当者によれば、
「この補償は、3カ月分がまとめて支払われる仕組みで、昨年12月~今年2月分の請求が3月から始まったばかりです。申請した人に東電が請求書を送ってくる。それに避難民が必要事項を書き込んで返送し、順次、払われます。今回のこの請求書に、避難民に対しては今年2月分までで減収補償が打ち切られる旨が記述されているので、それを読んで今後、町に相談してくる方が増えると思います。東電は、『個別のやむを得ないご事情により、就労が困難な状況にある方につきましては、個別のご事情に応じてお取扱いをさせていただきます』としていますが、その事情が具体的に何なのかは明らかにされていません」
しかも今回の請求書には、3月以降の賠償について、
「生命・身体的損害による就労不能損害」と「帰還にともなう就労不能損害」を取り扱うとの記述はあるが、その他の避難民への補償はこれで終了するというはっきりした文言は記されていないのだ。
「猛反発されるのを恐れ、明確な表現は避けた可能性があります。打ち切られると思っていない人たちが、6月に入って請求書が送られてこないことを受け、初めてその事実を知り、抗議してくるかもしれない」(先の県関係者)
3カ月後に「6月危機」が発生する危険性を孕んでいるのだ。
次回「原発補償金」ジャブジャブの日常的荒廃(4)では復興に結びつく補償金のあり方について考える。
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