軟派本が伝えるアナーキーな空気/『粋人粋筆探訪』
古書店の均一ワゴンから、廃棄処分寸前を拾い上げられ、書斎の段ボールに詰め込まれた雑本の山。著者が長年、散策がてらに収集した軟派本を虫干し代わりに読破して、書き手たちを供養し、著者自身は目の保養とタイムトリップを満喫した。回春に役立ったかどうかはともかく、愉しい気分が横溢している。
先発や抑えは無理だが、中継ぎ要員としてはもってこい、あるいは、一癖も二癖もある名脇役。戦後のジャーナリズムには、そうした要望を満たした文人たちが大勢いた。文章は達意、観察眼は行き届き、軟派な話題を得意とする。...